【いま読みたい! 注目の新刊】ファッション誌では教えてくれない流行がわかる『2017年、これがはやる』

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2017年最初に知っておきたい「流行」の原則

「おしゃれ」「流行」……なんとなくつかみどころがないこの概念。
毎月毎月「これが来る!」と謳うファッション誌は、たしかに見ていて楽しいのですが、自分なりに応用をきかせて流行を取り入れるための「芯」がほしい、といつも思っていました。

そんなとき、昨年12月31日に『2017年、これがはやる』(ダイヤモンド社)というムックが発売されたという話を聞きつけて、さっそく、「本日、校了!」メンバーで、元アパレルブランド勤務の中野亜海さんに話を聞いてみました。

流行は「3年」周期で変わる

『2017年、これがはやる』。
いつもファッション誌コーナーでうろたえてしまうから、読みたすぎるわ。しかも980円て! 1年分だから、12で割ったら、月82円だよ?

中野

その月割り計算、要る?  さて、これが表紙です。

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『2017年、これがはやる』カバー

かわいい! 青と黄色がはやるの?

中野

あ、青がはやります。本の文章の大事なところに黄色いラインを引いてあるから、そこを追っていけば流行ポイントがわかるよという意味で入れてるの。

へえー。ちゃんと中身と連動してるんだね。流行って、じつは結構漠然とした概念だと思うんだけど、実体はどうなのかね?

中野

まず大前提として、流行って3年で変わるんだ。

え、3年? 春とか秋とかシーズンごとに変わっているわけじゃないの?

中野

うん、たしかにシーズンごとに新作は出るけど、まず最初にパリコレとかのコレクションで、今年流行るものが発表されるところから始まるのね。それで、1年めに真のファッショニスタたちがそれを真似するの。だから1年めは、もうめっちゃおしゃれな人しかそれをやらない。

真のファッショニスタ……。それが、流行の源流なんだね。

中野

うん、たとえば『WWD』とか『ギャッププレス』にコレクションが載っているから、すごいおしゃれ感度の高い人は、「あ、これからアフリカン流行るんだな」とか読み取っているんだ。

すごいね。そんなこと考えたこともないよ。

中野

それで、2年めに、ハイファッションの人たちの真似をし出すのが、モデルさんやスタイリストさん。

なるほど。その人たちが「今、ベージュにハマってます」とか紹介し始めるのか。

中野

そう、だいたい2年めで、流行は厚みを帯び出すんだよね。アパレルの人も失敗したくないから、2年めくらいから商品を厚く作り出すんだ。

そっか。たしかにある程度「広まりそう」って勝算がないと、商売にならないもんね。

中野

うん。じつはさ、昔アパレルに勤めてたからわかるんだけど、服って1か月でできちゃうんだ。企画からお店に並ぶまで、たぶん2か月かからない。

うそ! 本でも半年かかるのに。めっちゃ速いね。

中野

そう。だから、流行を見てから作っても間に合いはする。それで3年めが、あまりおしゃれ感度に高くない人まで浸透する時期なの。「あ、ガウチョパンツはみんなはいてるから、はかなきゃ」っていう。

へー、それで流行が終わるのか。

「リラックス」は、もう終わり

2017年のファッションテーマは「緊張感」

中野

今年2017年にサッと終わるものはね、七分丈のガウチョパンツ。あと、透けるチュールスカート。

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残念ながら、7分丈のガウチョパンツはもう終わり。9部丈、フルレングスはOKです

……そもそも持ってなかった。でも、街ではよく見かけたね。

中野

そうなの。去年まで流行っていたのが、リラックス×リラックスだったんだ。

じつはこれ、3年間くらいずっと流行ってた。

だけど上ゆる×下ゆるだとだらしなく見えちゃう。
「エフォートレス」って言って、あまり努力しない感じがはやっていたけど、今年は「緊張感」がキーワード。

緊張感! ひー。どうしよう。ボディラインが……。

中野

大丈夫。緊張感とはいっても、ピタピタではないよ(笑)。ジャストサイズ。ちょうどいいサイズ感のものを着るのが今年っぽい。

へそ出しピタTとかではないわけね。

中野

違います(ぴしゃり)。
じつは、シルエットってファッションにおいていちばん大事なの。もちろん、はやりの小物とかもあるけど、まずはシルエットをおさえておくのがいいよ。

へえ〜。じゃあ、去年流行ってたゆるっとしたものはもう着られないのかな?

中野

ううん、去年のものでも、ウエストにインして着るといいよ。ベルトをしてウエストマークするだけでも、かなり今年っぽくなります。
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今年っぽいシルエットはこんな感じで、どこかに「きゅっ」としめるところがある

おお、それはありがたいね。じゃあ、今年一番、「これだけは買ったほうがいい」ってものある?

中野

ベスト1は、ベレー帽だね。

ベレー帽! 人生で一度も買ったことがないよ!

中野

そういう人もいるかもだね(笑)でも、今年のテーマの緊張感を足してくれるちょうどいいアイテムなの。

そうか〜。でも緊張感だったら、ハットのほうがあるんじゃない?

中野

単体で見ればそうなんだけど、それは、ゆるっとした服がはやっていたからなんだよね。ハットでキリッとさせてバランスをとる。でも、キリッとした服にハットでキリッとさせたら「キメてる!」って感じになっちゃう。
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こんな風に、ハットだとキメすぎになってしまう

なるほど。たしかにハットだと強すぎるかもしれないね。私も買ったはいいけどかぶれなかったハットがあるよ。

中野

ベレー帽は、パリっぽいというか、洗練された、正統派の雰囲気を出してくれる。こなれ感が出るの。

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ベレー帽を入れると、かっこいいコーデも急に「パリ」の小粋さが出る

そうか。でも、かぶったことないからどうやってかぶればいいかわかんない。

中野

かぶるときもコツがあるんだ。それはね、生え際からかぶること。かぶり方も詳しく載ってます。

じゃあそれを真似すればいいんだね。色味は何がいいの?

中野

いちばん使いやすい色はグレー。私もグレーとベージュはもう買ったんだ。黒じゃなくて柔らかい色のほうが使いやすいよ。抜けが出るし、頭の重い色持ってくると背が低く見えるから。

抜け! 聞いてなかったらつい無難な黒を買うところでした。でもさ、こんなこと言っていいのかわからないけど、ベレー帽って、絵描きっぽくならない?

中野

そこ、心配になるよね(笑)。絵描きっぽくなるのは、かたい素材を選んでいるからだと思う。かたいと、ジャイ子になる(笑)けど、柔らかい素材を選ぶといいよ。

素材というアプローチ! なるほどな〜。

中野

すぐにバッグにもしまえるし、ハットより顔も暗くならない。うちの会社、原宿なんだけど、もうすでに、みんなかぶってるよ。

肉色ピンクは「ベージュ」と思って着る

さっき、「青がはやる」って言ってたけど、ほかにはどんな色がはやるの?

中野

今年は、肉色。ピンクベージュの年だね。ずっと無彩色がはやってたから、色がほしくなったってことなのかもしれない。

肉色ってまた斬新な。ベージュっぽいピンクってこと?

中野

そうそう。または、青みがかったピンクもはやるよ。ピンクって難しいと思うかもしれないけど、コツは、「ベージュだと思って着る」こと。

へー! ベージュだと思えば抵抗感薄れるね。

中野

そうだよね。じつはグレーも合うし、ちょうどいいセクシーさが出るから、トライすると楽しいと思うよ!

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これは青みピンク。顔から離れたところで着るのがベスト

ちょっとガーリーな感じのものも、ありなんだね?

中野

ずっとシンプルできてたから、リボンやレースとか、反動ではやるね。みんな飽きちゃったんだと思う。たとえば、大判のレースやプリーツなんかもアリ。でも、これを甘く着るのはだめで、クールでモードに着るのがいいよ。レザーのジャケットとか小物を合わせるとか、リボンは大きいものを1個だけ、とかのほうが大人っぽい。

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リボンは大きいのがひとつだと、大人のクールさが出てかっこいい

そういう基準があると、服選びのときに気をつけられるなあ。

中野

クラシカルっていうのも緊張感の一種だから、ぜひかちっとクラシカルっぽく見えるサイドゴアブーツは絶対に買いだよ!

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サイドゴアブーツで、可愛いレースやリボンもクールに見える

逆に、今後流行が終わっていくものって、どんなもの?

中野

気をつけてほしいのが、テラコッタとリブニット。

テラコッタ? 寺? パンナコッタ?

中野

寺ではないよ~! テラコッタってのは、レンガ色。去年はやりすぎたから、これは3年たたずに消えます。

あ、たしかにこの色、着てる人多かった。セールでもよく見たね。あと、リブニット?

中野

そう、だからもし今年リブニット買うなら、安いのを買ってガンガン着て、来年にはさよならだね。

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今年一年ははやるので、安いものを買ってガンガン着よう!

「高い服を長く着る」って、どう思う?

私ずっと迷ってるんだけど、「高い服を長く着る」っていう概念あるじゃない。あれって、どう思う?

中野

私はね、何が定番か見極めるのって難しいなと思う。こんなにかわいくて安くて素敵なものがいっぱいあるから、わざわざ高いものを買わなくてもいいんじゃないかって思ってる。

たしかに、定番って言われてるものも微妙に毎年形が変わったりするもんね。

中野

うん。高くて毛玉ができてるよりも、安くてもきれいなほうが印象が良いと思うんだよね。

そうだね。ちょっと、手持ちの服を見直したくなってきたよ。
ちなみに、このムックの著者さんは、どんな方?

中野

著者は4人いて、スタイリスト、接客アドバイザー、ファッションライター、VMD(アパレルショップのディスプレイ専門家)だよ。

4人も! 豪華だね〜。どういう基準でこちらの4人にお頼みしたの?

中野

ハイファッションの人向けじゃなく、ふつうの人向け、つまり「2年め」のことを教えてもらえる方を探して、実際にお店でお客さんに接している人がいいと思ったの。

あ〜そっか。私たちお客さんに実際に「これが来てますよ〜」って話してる人たちだね。あみちんも元々はアパレルブランドにいたんだよね?

中野

そうなの。だから、雑誌の流行に違和感があったんだ。アパレルショップは、いかにお店の人に買ってもらえるかが勝負じゃない。だからそっちの「顧客目線」で作りたかった。

服屋さんで、すごいおしゃれそうな服を「はやりですよ」ってすすめられても「現実的にこれ着て生きるの無理じゃない?」って思うことはあるよね。

中野

そうそう、そういう反応を生で見てる人たちだから。お客さんとちゃんと会話したことある人っていうのは、強いよね。

そういう目線で編集されてるのね。たしかに、今すぐ買い物に活かせそう。すごくヴィジュアルの充実した書籍、という感じで、読みごたえがあって、早く読みたい!(取材時点ではまだ本の形になっていませんでした)

中野

ありがとう! 雑誌じゃないから、広告とかのしがらみもないので、言いたい放題言ってます!

2017年、これがはやる (ダイヤモンドMOOK)

※本文中の洋服アイテム写真(c)chifuyu aizawa(biswa)

このインタビューの1週間後、ベレー帽を買いました。
「帽子は似合わない」と、ずーっと思っていたけれど
頭にフィットするから、「かぶってる」感がなく、自然な気がします。

あと、頭があったかいです。

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この記事を書いた人

谷綾子
編集者
滋賀県出身。「椅子なきところに椅子を置く」をテーマに、料理、児童書、文芸など、いろいろなジャンルを手がけています。たのしくて情緒のある本と、お笑いが好き。アルパカも好き。

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