『コーヒーが冷めないうちに』が本屋大賞にノミネートされました。
実はこの本、編集を手掛けたのは『本日、校了!』のメンバーでもある池田るり子さん。
この本の作家でもある川口俊和さんは、小説を書くのは初めてだそうです。
それだけでも驚きなのに、なんと池田さんも、小説の編集は初とのこと。
そんな初めて尽くしの小説が、どうして43万部のベストセラーになったのか。
池田さんにこの本がどうして誕生したのか、どうして売れる本になったのかを徹底インタビュー。
第3回の今日は、販促のなぞについて聞いてみました。
どうぞご覧ください。第1回 小説を書くのが初めての人の本が、どうやってベストセラーになったのか?
第2回 小説の編集で知っておくべきなのは「ジャンル」と「キャラクター」
第3回 売るために「販促チーム」をつくった
第4回 オビに入れるのは「ジャンル」と「共感」
中野
『コーヒーが冷めないうちに』は売り方もすごかったよね。どんなことをやってたの?
池田
まず、発売3か月前に、会社で販促チームをつくったんだよね。
中野
販促チーム!? 御社はすべての本にチームがつくの?
池田
ううん。このとき、黒川さんが転職してきて上司になったんだよね。そこでキックオフ会議っていうのが始まったの。わたしがずっと文芸をやりたかったってことを知って、「そんなにやりたいんだったら本気でやろう」って言ってくれて、販促チームをつくることになったんだ。
中野
黒川さん、イケメンすぎるよ! メンバーは?
池田
私でしょ、黒川さんでしょ、それからマーケティング部と営業部の先輩とで計4人。
中野
マーケティング部も含まれるんだ。
池田
うん、広告とかPOPやパネルなんかの拡材をつくってくれたり、の。チームでまず決めたのは「棚差しになったら選んでもらえないから、かならず発売のときは平積みにする」ってこと。
中野
平積みにするってことは、たとえば5冊とかの注文を、事前に書店さんからもらってこないといけないんだよね?でも、新人作家さんでそれをやるのは難しくない?
池田
そのために、このカフェ風パネルをつくったの。
池田
「平積みをしてくれたら、このパネルをプレゼントします」って、事前のチラシに写真入りでのせたの。そのチラシを持って、営業部の人がすごくがんばって営業してくれて。そしたら100店舗くらいのお店で「そんなに本気なら、平積みしましょう」って言ってくれて。
中野
えっ! そんなに!
池田
このパネル、パーツがいろいろあって、つくるのが大変で……。発売の前に、朝から会議室に集まって、ひとつひとつみんなで印刷して、貼って、切り抜いて作ったんだよ〜。
中野
差支えなければ初版を聞きたいんですが……。
池田
6000部だよ。
中野
まじで!! それで、平積みで勝負か。
池田
これは本当に書店員さんの心意気に感謝で、ふつうはやってくれないと思う。でも、書店員さんも「新しい作家を発掘したい、応援したい」っていう気持ちがすごくあるんだよね。「売れないよね」って黙って見てるだけじゃなくて、自分たちで見つけよう! っていう心意気がすごいの。それで、書店員さんが押してくれたんだ。
中野
ありがたや。
池田
ほんとありがたや……それで、まず、東北で火がついたんだ。
中野
えっ、まさかの地方ウケ!! 実用書でも、どこかの地方で売れてから、全国で仕掛けるとめっちゃ売れるっていうことがあるけど、小説でもそうなんだね。
池田
うん。そのあと、広島に行って、書店員さんに「この本をどうしても広めたいんです」ってお願いをしたの。そしたら、広島の書店員さんもすごく熱い気持ちを持っている人ばっかりで、みんな「それなら、やりましょう!」って言って、どんと仕掛けてくれて。そしたらすごく売行きが良かったんだよね。
中野
「仕掛けたら効く」っていうのは、まじでテンションあがるよね! 編集も営業も。
(次回『第4回 オビに入れるのは「ジャンル」と「共感」』へと続きます!)
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