【本屋大賞ノミネート!『コーヒーが冷めないうちに』】第3回 売るために「販促チーム」をつくった

Category: あう 0220ho_3201

『コーヒーが冷めないうちに』が本屋大賞にノミネートされました。
実はこの本、編集を手掛けたのは『本日、校了!』のメンバーでもある池田るり子さん。
この本の作家でもある川口俊和さんは、小説を書くのは初めてだそうです。
それだけでも驚きなのに、なんと池田さんも、小説の編集は初とのこと。
そんな初めて尽くしの小説が、どうして43万部のベストセラーになったのか。
池田さんにこの本がどうして誕生したのか、どうして売れる本になったのかを徹底インタビュー。
第3回の今日は、販促のなぞについて聞いてみました。
どうぞご覧ください。

第1回 小説を書くのが初めての人の本が、どうやってベストセラーになったのか?
第2回 小説の編集で知っておくべきなのは「ジャンル」と「キャラクター」
第3回 売るために「販促チーム」をつくった
第4回 オビに入れるのは「ジャンル」と「共感」

3か月前に、販促チームが発足

中野

 『コーヒーが冷めないうちに』は売り方もすごかったよね。どんなことをやってたの?

池田

 まず、発売3か月前に、会社で販促チームをつくったんだよね。

中野

 販促チーム!? 御社はすべての本にチームがつくの?

池田

 ううん。このとき、黒川さんが転職してきて上司になったんだよね。そこでキックオフ会議っていうのが始まったの。わたしがずっと文芸をやりたかったってことを知って、「そんなにやりたいんだったら本気でやろう」って言ってくれて、販促チームをつくることになったんだ。

中野

 黒川さん、イケメンすぎるよ! メンバーは?

池田

 私でしょ、黒川さんでしょ、それからマーケティング部と営業部の先輩とで計4人。

中野

 マーケティング部も含まれるんだ。

池田

 うん、広告とかPOPやパネルなんかの拡材をつくってくれたり、の。チームでまず決めたのは「棚差しになったら選んでもらえないから、かならず発売のときは平積みにする」ってこと。

中野

 平積みにするってことは、たとえば5冊とかの注文を、事前に書店さんからもらってこないといけないんだよね?でも、新人作家さんでそれをやるのは難しくない?

池田

 そのために、このカフェ風パネルをつくったの。

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池田

 「平積みをしてくれたら、このパネルをプレゼントします」って、事前のチラシに写真入りでのせたの。そのチラシを持って、営業部の人がすごくがんばって営業してくれて。そしたら100店舗くらいのお店で「そんなに本気なら、平積みしましょう」って言ってくれて。

中野

 えっ! そんなに!

池田

 このパネル、パーツがいろいろあって、つくるのが大変で……。発売の前に、朝から会議室に集まって、ひとつひとつみんなで印刷して、貼って、切り抜いて作ったんだよ〜。

中野

 差支えなければ初版を聞きたいんですが……。

池田

 6000部だよ。

中野

 まじで!! それで、平積みで勝負か。

池田

 これは本当に書店員さんの心意気に感謝で、ふつうはやってくれないと思う。でも、書店員さんも「新しい作家を発掘したい、応援したい」っていう気持ちがすごくあるんだよね。「売れないよね」って黙って見てるだけじゃなくて、自分たちで見つけよう! っていう心意気がすごいの。それで、書店員さんが押してくれたんだ。

中野

 ありがたや。

池田

 ほんとありがたや……それで、まず、東北で火がついたんだ。

中野

 えっ、まさかの地方ウケ!! 実用書でも、どこかの地方で売れてから、全国で仕掛けるとめっちゃ売れるっていうことがあるけど、小説でもそうなんだね。

池田

 うん。そのあと、広島に行って、書店員さんに「この本をどうしても広めたいんです」ってお願いをしたの。そしたら、広島の書店員さんもすごく熱い気持ちを持っている人ばっかりで、みんな「それなら、やりましょう!」って言って、どんと仕掛けてくれて。そしたらすごく売行きが良かったんだよね。

中野

 「仕掛けたら効く」っていうのは、まじでテンションあがるよね! 編集も営業も。

(次回『第4回 オビに入れるのは「ジャンル」と「共感」』へと続きます!)

この記事を書いた人

中野亜海
編集者
愛媛県出身。読んだ人が「きゃー! やりたーい!」となる本をつくりたいと思っています。メイクから世界遺産まで何でもつくってます。趣味は三味線と江戸時代。尊敬する人は保科正之。

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