大好きな編集者に話を聞きたい!――池田るり子の場合

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このサイトは、「この人のつくるものが大好き!」と、胸を張って言い合える6人の仲間でつくっています。
どんな思いでものをつくっているのか、どんなことを考えているのか……
サイトの公開にあたって、お互いのインタビューをしてみました。

ここでは、35万部を突破した『コーヒーが冷めないうちに』、24万部の『こうして、思考は現実になる』、シリーズ10万部の『あなたは半年前に食べたものでできている』、10万部の『一歩を越える勇気』などの大ヒット作をたくさん手がけている編集者、池田るり子さんにインタビューします。
彼女の持つ凜とした空気と温かさは、誰もが入りたくなるおふとんのようなのです。

るり子を語るうえで欠かせないのは、やっぱり『コーヒーが冷めないうちに』だね(この取材の後、2017年本屋大賞にノミネートされました!)。
この本、依頼してから本が出るまでに、4年くらいかかったって言ってたもんね。
文芸書をほとんど出してない出版社で、この売れ行きは本当にすごい。
ちなみに、るり子が今まで編集した本って何冊くらい?

池田

50冊くらいかな。
営業に4年いたから、今で編集6年目なの。

営業も長かったんだよね。じゃその中で、るり子のターニングポイントになった本って何?

池田

うーん、『あなたは半年前に食べたものでできている』かなぁ。

あれ、タイトルも画期的だったね。
最後のレシピも「作ってみたい」ものばかりで、隅々までよく考えられているなあって思った。
なんであれがターニングポイントなの?

池田

あれは、初めて「自分のため」に作った本だったんだよね。

自分のため?

池田

うん。それまでは、実在しない「誰か」を想像しながら作っていたの。
きっとこんな人がいるんじゃないか?って、架空の読者を想定していたんだけど、
あの本は初めて「自分」をターゲットに作った本で、それがいろんな人に受け入れてもらえて、すっごくうれしかったの。
じつはあの本を作るまで、「私は編集者に向いてない」ってずっと思ってたんだ。
一般的に人気のあるものと、自分が好きなものは違うと思っていたんだよね。
だから、一般的に人気のありそうなものをがんばって作ってたんだけど、ぜんぜん結果が出なくて。
やめたほうがいいのかなーって思ってた時期だったの。

そんな時期あったんだ。

池田

うん、自分がほしいものを作って、それが売れる、なんてことは、一部の恵まれたチャンネルを持っている人だけだと思ってたんだよね。
だけど、自分がずっとほしかったものを、初めて本にした一冊なんだ。

『あなたは半年前に食べたものでできている』って本だけど、そういえば、るり子は「主食がお菓子だった」って言ってたもんね(笑)

池田

そうそう(笑) 
この本をつくる前、当時住んでた荻窪のラーメン屋の前で、立ち尽くしてたことをすごく覚えてる。
「なんで私は好きなものを食べたら太るのに、この人たちは太らないんだろう……」って。
それで、「好きなものを好きなだけ食べても太らない、食欲コントロール」というテーマで本を作ったの。

ラーメン屋の前で立ち尽くしてるの、怖いね(笑)
でもさ、そこからは…というかそれまでもだけど、ヒットをすごくたくさん出しているよね。
どれもまず企画がおもしろいし、熱量があるよね。
るり子は、読者に何を与えたいと思って本を作っているの?

池田

そうだなあ……「案外いけるかも、自分」って思ってほしいかな。

案外いけるかも! なんでそう思ってほしいの?

池田

うーん、私もずっとそうだったけど、自分のことをすごくダメだと思うのって、つらいよね。
でも、個人的な経験なんだけど、音楽とトライアスロンをこつこつと続けていて、このふたつって、努力と評価と満足感が、ちゃんと比例するんだよね。
ちゃんとやれば速くなるし、うまくなるし、「よくやった!」と思える。
それってすごくうれしくて、この世界はすごくいいなあ、生きるに値するなあって思える経験だと思うの。
だから、こういう「やってみたらうまくいって、じぶんもすごくうれしい」っていう気持ちを読者に感じてもらえたらいいなって思ってる。

努力と評価と満足感。
そこを読者に感じてもらえる本って、すごくいい本だよね。

池田

そう。むずかしいかもしれないけど、めざしたい。

あ、全然話変わるけど、るり子って「敬語ブレイカー」だよね。

池田

何それ(笑)

はじめて二人でごはん食べたとき、「あの、敬語、やめませんか?」って敬語で言われた(笑)

池田

そんなこと言ったっけ(笑)

あと、このサイトをいっしょにつくっている、あみちんとももちんと初めて4人でごはん食べたときも、話の途中で突然「ねぇ、ここ敬語いる?」って、ぶっこんでた。

池田

そうだっけ(笑)
でも、たしかに「この人は敬語じゃなく話したい」って思ったらそうするかも。

著者さんと話すときも、敬語じゃないことあるの?

池田

さすがに敬語だけど、でも、苗字で呼ばれてることがほぼないかも。だいたい「るりちゃん」って呼ばれる……。

それってすごいね。でも、るり子の「誰からも愛され」具合は、業界随一だよ。

池田

えー!? そうかなー。

そうそう。でも、誰からも好かれる人って「当たり障りない人」だったりするけど、るり子は、自分の思ったことはちゃんと言うんだよね。

池田

なんか、そんなほめていただいちゃってすみません(笑)

先生、ちゃんと思ったことをいいつつ、失礼にならない人になるにはどうしたらいいですか?

池田

そうですね、「自分の気持ちは敬語で話さない」ということからはじめてはいかがでしょうか(笑)

ほう、自分の気持ち?

池田

そう。たとえばだけど、「『マジかー』と思いました」とか、「めっちゃうれしい!!!!です!!!」とかね。
「マジかー!」って言っちゃうと失礼なんだけど、「まじか!」って思った気持ちは伝えたいから、「マジか!」「と思いました!」って言ってるかな。

合わせワザだ(笑)

池田

心の言葉はなるべくフランクにしようと思ってるよ。

たしかにそれなら、敬意を崩さず、距離を縮められるかもしれない。試してみます!
あとさ、るり子は「引き出す」のがうまい。ついツルッと本音をしゃべっちゃうんだよ。「つるり」だね。

池田

(氷のような目をするるり子)
わたし、世の中からダジャレを排除する、ダジャレバスターズとして活動しているんだよね……。

……あっ、でもね、でも、全然嫌な感じじゃなくて、自分の中にあるものが、意外ときれいなものかも、って思える受け止め方をしてくれてるの。
なんか、るり子を信頼する著者さんの気持ち、わかる気がする。

池田

著者さんたちに対しては、本当にみんなすごいな、大好きだなーと思いながら本を作っているよ。
照れちゃって言えないことも多いけど。

前に、書店で見つけたフリーペーパーに、るり子が出てて、そこに「いつも、恋をしながら本を作っています」って書いてあって、ものすごくびっくりしたよ!
でも、それくらい著者さんのことを知ってほしい、広めたい、って気持ちで向き合いたいなと思うよ。

池田

ありがとう!

るり子は、ほぼ日で記事を書いたり、おいしいお店にくわしかったり、歌がものすごく上手かったり……とにかく人として層が厚くて、強いのにやわらかい人。

まだまだ聞きたいことがあるので、後日改めて、ロングインタビューさせてもらう予定です。

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この記事を書いた人

谷綾子
編集者
滋賀県出身。「椅子なきところに椅子を置く」をテーマに、料理、児童書、文芸など、いろいろなジャンルを手がけています。たのしくて情緒のある本と、お笑いが好き。アルパカも好き。