胃を削ってまで子どもにミルクをあげる父……ペンギンの子育てってすごい vol.2

Category: まなぶ スクリーンショット 2018-09-17 14.48.57

「ペンギンは家で飼えない」この事実に肩を落とした前回の取材。
でも「ペンギンには脚がある」などなど、意外な秘密がわかって魅力が倍増したのでした。
というわけで、vol.1に続いて『世界一おもしろい ペンギンのひみつ』を編集した池田るり子さんに、さらなるペンギンの魅力を聞きました。

ちなみにこの本って、ペンギンが可愛いから作ることになったの?

池田

うん。可愛すぎて、ペンギン飛行機製作所っていうのを設立することになったんだ。
それで、ペンギンのことをちゃんと知ろうとして、ペンギン博士にいろいろお聞きしてたら、
おもしろい話がいっぱい聞けてね。
あやこ、知ってる? ペンギンの子育てって、ほんとすごいんだよ。

ペンギンの子育て? どんななの?

池田

考えてもみてよ、南極の、冬に繁殖するんだよ。
−60℃とかの環境下で、卵生んで、子ども育てるなんてすごいよね。

 

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見るからに過酷。

 

そっかー。−60℃って、全然実感としてはわからないけど、とりあえず万物が一瞬で凍りそう。
そこで、自分が生きていくだけじゃなくて、子どもを育ててるってすごすぎるね。

池田

寒すぎて、ひなが氷の地面に落ちたら、60秒で死んじゃうらしいよ。

え! リアル3秒ルール的な……。
「落ちたら」ってことは、ひなはいつも抱っこされてるってこと?

池田

そうなの。ひなは、大きくなるまで、親鳥の足の上にずっとのっかってるの。
お腹の皮に隠れて。

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地面にはギリギリついてない。あったかそう。

 

なんと可愛い……!
でも、親は、必死なんだよね、これ。つま先ずっと上げてるんだね。人間だったら、つるよね。

池田

そうそう、しかも、お父さんは子どもにエサをやるために、2か月近く絶食するんだって。
自分の胃や食道の粘膜を溶かした「ペンギンミルク」を子どもにあげるんだよ。

ペンギンミルク! お父さんなのにミルクを。

池田

本当にミルクみたいに、タンパク質や脂肪がたくさん含まれているみたいだよ。
博士に「味はどんな味ですか?」って聞いたら「変な味です」って言われたけど。

そこでちゃんと味を聞く、るりこは偉いよ。でも、博士は飲んだことあるのかな……。

池田

あるのかな……。でも、ペンギンのお父さんは、絶食のせいで、体重が40%も落ちちゃうらしいよ。

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身を削って子どもに栄養を与えるお父さん。

 

過酷だね……。

あれ? さっきから気になってるんだけど、お母さんは? どこにいるの?

池田

お母さんは、卵を生んですぐ、出稼ぎに出るんだ。

出稼ぎ?

池田

そう、お父さんに卵を預けて、エサを取りに海に行くんだって。

そうなんだ! じゃあ生まれた子どもに会えないんだ。

池田

うん、だから、お母さんは、海からぶじに帰ってきた時に、子どもと「はじめまして」するんだよね。

そっか、そりゃあ会いたいだろうねえ。
お父さんも「お母さんは帰ってくる」って信じて待ってるのかな。健気だ。

池田

お父さん、ガリガリに痩せて、お母さんが帰ってくるのを待ってるんだよ。
すごい過酷な子育てだよね。もうちょっとラクする方法なかったのかなって思ったよ。胃を溶かしてまで子どもを育てたいという愛情の深さ!

たしかに! あの可愛さの裏には、こんな過酷な子育てがあったんだね。

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やっぱり可愛い

 

可愛いといえばさ、この本、イラストもたくさん入ってるけど、どれもペンギン好きのツボを押さえた悶絶の可愛さだよね。これとか。

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右上のほうに、うんていにしがみついてる子ペンギンがいる。

池田

これ、可愛すぎるよね。イラストレーターさんが、ものすごくこまかいところまで描いてくれたんだ。
このイラストレーターさん、もともとイタチが好きらしいよ。

えっ、イタチ?

池田

そう。なぜか、ペンギンの打ち合わせでイタチの話をずっとしてくれたんだ。
「南極にはイタチ科がいないんですよ」とか。

イタチ科……。オコジョとかかな?

池田

あとカワウソとか。

カワウソ! たしかに、ちかしい感じする。

池田

ほかのイラストレーターさんもみんな、いろんなペンギンの動きを研究して描いてくれたんだって。
全部アングルが違ってたりして、見ててすごい楽しかった!

ほんとだ、平面的じゃなくて、立体的だもんね。動物って、描くの大変だろうに……。
でもこの本、見てて可愛いだけじゃなくて、ペンギンの「すごい」がいろいろわかるのが楽しいね。

池田

そうそう、単なる知識紹介じゃなくて、日本と比べたり、人間にたとえたりとかしてみたよ。
「私だとどうかな?」って自分に引き寄せて考えられるといいかなと思って。

うんうん。絵日記の形式になってて、たまに写真が入るのも素敵だった! 絵日記のときは、「可愛いねえ」と孫を見るような気分だけど、南極の引きの写真で、列をなしてるペンギンを見ると「おおお……!」ってグッときた。
でもさ、ダメだと思うけどさ、やっぱり、ペンギンって飼えないのかなー?

池田

しぶといね。
うーん、南極にいるペンギンじゃなかったら飼えるのかも。マゼランペンギンとか、暑い地域の外にいるペンギンがいて、その子たちなら外で飼えるかも……? 無理かな……?
でも、コウテイペンギンのひなが一番可愛いんだよね……。
うーん……。

 

ペンギン、犬、猫。動物を見るとつい「可愛い」と言ってしまいます。
でも、この本を読むとわかるのが「可愛いだけの生き物なんていないんだなあ」ってことでした。
それぞれの環境で、必死で生きようとしてる姿は、美しくて気高い。
だけど、これからも「可愛い」って言い続けます。だって、可愛いから。
そして、何かを「可愛い」と愛でることは、自分の中の愛を再認識する行為。
ペンギンは、そんなことも気づかせてくれました。

この記事を書いた人

谷綾子
編集者
滋賀県出身。「椅子なきところに椅子を置く」をテーマに、料理、児童書、文芸など、いろいろなジャンルを手がけています。たのしくて情緒のある本と、お笑いが好き。アルパカも好き。

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