「ペンギンは家で飼えない」この事実に肩を落とした前回の取材。
でも「ペンギンには脚がある」などなど、意外な秘密がわかって魅力が倍増したのでした。
というわけで、vol.1に続いて『世界一おもしろい ペンギンのひみつ』を編集した池田るり子さんに、さらなるペンギンの魅力を聞きました。
谷
ちなみにこの本って、ペンギンが可愛いから作ることになったの?
池田
うん。可愛すぎて、ペンギン飛行機製作所っていうのを設立することになったんだ。
それで、ペンギンのことをちゃんと知ろうとして、ペンギン博士にいろいろお聞きしてたら、
おもしろい話がいっぱい聞けてね。
あやこ、知ってる? ペンギンの子育てって、ほんとすごいんだよ。
谷
ペンギンの子育て? どんななの?
池田
考えてもみてよ、南極の、冬に繁殖するんだよ。
−60℃とかの環境下で、卵生んで、子ども育てるなんてすごいよね。
谷
そっかー。−60℃って、全然実感としてはわからないけど、とりあえず万物が一瞬で凍りそう。
そこで、自分が生きていくだけじゃなくて、子どもを育ててるってすごすぎるね。
池田
寒すぎて、ひなが氷の地面に落ちたら、60秒で死んじゃうらしいよ。
谷
え! リアル3秒ルール的な……。
「落ちたら」ってことは、ひなはいつも抱っこされてるってこと?
池田
そうなの。ひなは、大きくなるまで、親鳥の足の上にずっとのっかってるの。
お腹の皮に隠れて。
谷
なんと可愛い……!
でも、親は、必死なんだよね、これ。つま先ずっと上げてるんだね。人間だったら、つるよね。
池田
そうそう、しかも、お父さんは子どもにエサをやるために、2か月近く絶食するんだって。
自分の胃や食道の粘膜を溶かした「ペンギンミルク」を子どもにあげるんだよ。
谷
ペンギンミルク! お父さんなのにミルクを。
池田
本当にミルクみたいに、タンパク質や脂肪がたくさん含まれているみたいだよ。
博士に「味はどんな味ですか?」って聞いたら「変な味です」って言われたけど。
谷
そこでちゃんと味を聞く、るりこは偉いよ。でも、博士は飲んだことあるのかな……。
池田
あるのかな……。でも、ペンギンのお父さんは、絶食のせいで、体重が40%も落ちちゃうらしいよ。
谷
過酷だね……。
あれ? さっきから気になってるんだけど、お母さんは? どこにいるの?
池田
お母さんは、卵を生んですぐ、出稼ぎに出るんだ。
谷
出稼ぎ?
池田
そう、お父さんに卵を預けて、エサを取りに海に行くんだって。
谷
そうなんだ! じゃあ生まれた子どもに会えないんだ。
池田
うん、だから、お母さんは、海からぶじに帰ってきた時に、子どもと「はじめまして」するんだよね。
谷
そっか、そりゃあ会いたいだろうねえ。
お父さんも「お母さんは帰ってくる」って信じて待ってるのかな。健気だ。
池田
お父さん、ガリガリに痩せて、お母さんが帰ってくるのを待ってるんだよ。
すごい過酷な子育てだよね。もうちょっとラクする方法なかったのかなって思ったよ。胃を溶かしてまで子どもを育てたいという愛情の深さ!
谷
たしかに! あの可愛さの裏には、こんな過酷な子育てがあったんだね。
谷
可愛いといえばさ、この本、イラストもたくさん入ってるけど、どれもペンギン好きのツボを押さえた悶絶の可愛さだよね。これとか。
池田
これ、可愛すぎるよね。イラストレーターさんが、ものすごくこまかいところまで描いてくれたんだ。
このイラストレーターさん、もともとイタチが好きらしいよ。
谷
えっ、イタチ?
池田
そう。なぜか、ペンギンの打ち合わせでイタチの話をずっとしてくれたんだ。
「南極にはイタチ科がいないんですよ」とか。
谷
イタチ科……。オコジョとかかな?
池田
あとカワウソとか。
谷
カワウソ! たしかに、ちかしい感じする。
池田
ほかのイラストレーターさんもみんな、いろんなペンギンの動きを研究して描いてくれたんだって。
全部アングルが違ってたりして、見ててすごい楽しかった!
谷
ほんとだ、平面的じゃなくて、立体的だもんね。動物って、描くの大変だろうに……。
でもこの本、見てて可愛いだけじゃなくて、ペンギンの「すごい」がいろいろわかるのが楽しいね。
池田
そうそう、単なる知識紹介じゃなくて、日本と比べたり、人間にたとえたりとかしてみたよ。
「私だとどうかな?」って自分に引き寄せて考えられるといいかなと思って。
谷
うんうん。絵日記の形式になってて、たまに写真が入るのも素敵だった! 絵日記のときは、「可愛いねえ」と孫を見るような気分だけど、南極の引きの写真で、列をなしてるペンギンを見ると「おおお……!」ってグッときた。
でもさ、ダメだと思うけどさ、やっぱり、ペンギンって飼えないのかなー?
池田
しぶといね。
うーん、南極にいるペンギンじゃなかったら飼えるのかも。マゼランペンギンとか、暑い地域の外にいるペンギンがいて、その子たちなら外で飼えるかも……? 無理かな……?
でも、コウテイペンギンのひなが一番可愛いんだよね……。
うーん……。
ペンギン、犬、猫。動物を見るとつい「可愛い」と言ってしまいます。
でも、この本を読むとわかるのが「可愛いだけの生き物なんていないんだなあ」ってことでした。
それぞれの環境で、必死で生きようとしてる姿は、美しくて気高い。
だけど、これからも「可愛い」って言い続けます。だって、可愛いから。
そして、何かを「可愛い」と愛でることは、自分の中の愛を再認識する行為。
ペンギンは、そんなことも気づかせてくれました。
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