このサイトは、「この人のつくるものが大好き!」と、胸を張って言い合える6人の仲間でつくっています。
どんな思いでものをつくっているのか、どんなことを考えているのか……
サイトの公開にあたって、お互いのインタビューをしてみました。
『こころのふしぎ なぜ? どうして?』という本を知っていますか?
子ども向けの学習本……なのですが、それだけじゃないんです。
大人にも「深い」「めちゃ心に響く」と評判で、
さらに編集者からも「つくりこみがすごい」「こんな本見たことない」とものすごい評価を得ている本。
それをつくったのが、きょうインタビューする「谷綾子」なんです。
綾子は、ほかにも『料理のきほん練習帳』『正しいスキンケア事典』など、
業界でも評判の、おもしろいヒット作をたくさん出している、凄腕編集者です。
でも……凄腕なんだけど、あんまりそう見えない?
プロフィール写真を見ると、ほわんとしていてかわいい……
なんか、仕事のすごさと、見た目のほわほわにギャップがあるぞ~!
きょうはそんな編集者・谷綾子の生態にせまるべく、話を聞いてみました。
聞き手は、池田です!
池田
あやこは、ほんわかしているのに、ものすごいヒットをたくさん出しているよね。
これまでの経歴は……『こころのふしぎ なぜ? どうして?』が52万部、『料理のきほん練習帳』が37万部、『正しいスキンケア事典』が16万部……、ぜんぶ紹介していると、このインタビューが終わっちゃうくらいにすごいんだけど、10万部を超えているものはいくつあるの?
谷
えーっと……8? あ、いや、9?
池田
9冊もあるんだ!すごいね!
そんな30代の編集者、ほかにいないんじゃないかなあ。
谷
あれ?違うか。
ちょっとまってね、えーと、10かな?
池田
増えた!
谷
いや、ちょっとまてよ……(もごもご)
なんかね、数が数えられない病にかかってる。
池田
えっ……それは難病だね……。
編集していて文字数とか数えるとき、どうするの?
谷
えっとね、指さしながら数えてるよ。
池田
あ、そっか。そうすればいいよね(笑)
まあとにかく、数えられないくらいにヒット連発のあやこなんですが、どうしてそんなにたくさんヒット作がつくれるの?
そもそも、どんな気持ちで本をつくっているのか、教えてほしい!
谷
うーん、そうだなあ。
答えになっているかわからないんだけど、本をつくるときによく思い出してるシーンがあるの。
ある書店で、お客さんを見てみようと思って、はりこんでたことがあるんだよね。
池田
はりこみ! そんなことしてるの!?
谷
そう、よくはりこんでるんだけど、書店の子供の本のコーナーで、お母さんが子どもに本を買おうとしてたの。
でも、そのとき、子どもは全然その本を読みたそうじゃなかったんだよね。
池田
どんな本だったの?
谷
すごくカタい本で、お母さんは、子どもがコレを読んでたら安心するだろうな、っていう本だった。
池田
ああ、「好きなものを買ってあげる」んじゃなくて、「よいものを買い与える」みたいな感じだったんだね。
谷
そう、そう、そうだったの。
その、子どもが全然楽しそうじゃなかった姿がすごく印象に残っていて。
本を買うってすごく楽しいことのはずだし、でも、お母さんが読ませたい本があるのもわかる。
だからね、児童書だったら、お母さんが買って安心するし、子どもも楽しい本をつくりたいなって、ずっと思ってるんだよね。
池田
ああ、あやこのつくる本に、その思想があるのわかるよ!
『こころのふしぎ なぜ? どうして?』とか、まさにそうだよね!
「なぜ人を殺しちゃいけないの?」とか、「『ごめんね』を上手に言うほうほうは?」とか、「いじめられたら、どうしたらいい?」とか、すごく実用的な内容なのに、読むのが楽しい!
谷
そういう本をつくりたいって思ってるなあ。
メリットがある、効果があるのが実用書だけど、わたしはそこに「楽しい」を入れたいと思って。地に足がついたファンタジーっていうか。
池田
正しいし、必要なことを、「楽しく」伝える。
それってすごくいいね、かっこいいなあ。
なんか、ディズニーみたいだね?人にいじわるをしたらいけないよってことを、「シンデレラ」で伝えるみたいな。
谷
そうかもしれない。ジブリとかディズニー、って言うと、ちょっと大風呂敷広げすぎてて恥ずかしいけど、この本が受け入れてもらえたら、ああ、ここはいい世界なんだな、って思えるようなものが好きだなあ。
池田
これが受け入れられたら、いい世界だなって思えるもの…?
谷
なんか、みんなの心のなかのきれいなところが反応するようなもの、っていうか。
ひとつ、思っていることがあってね、大人でも子どもでも、善人でも悪人でも、だれにでもいい心があると思うの。
だから、いい本をつくって、みんなの「いい心」にふれたいというか……。
池田
そうなんだ…! すごいなー、なんか、鳥肌たっちゃったよ。
そんなこと考えてたんだ…!
でも、どうしてそんなこと思うの? 人のキレイな心にふれたいって、たしかにそうだけど、私は考えたことがなかったな。
なにかそう思うようになったきっかけがあるの?
谷
うーん、どうだろう……
それが大きく関係したかどうかはわからないんだけど、小さいころからずっと、「本音が言えない」って思ってたかな。
池田
なかなか本音が言えない……
いまはすごく明るいけれど、もともと内気な子だったの?
谷
うん、あんまり意見とか言えなかったかな。
でも、自分ははっきりと言えないけど、おんなじように考えている人はきっといるはずだ、とも思ってたの。
池田
広い世界には、自分の思っていることと同じように思っている人がいるんじゃないか、と。
谷
そう、だからね、本がたくさん広まるってことは、そう思う人この指とまれ!みたいに、同じことを考えている人を探している感じなのかもしれないな。
池田
同じことを思う人を、本というツールで探してるんだね。
なんかそう思うと、書店がすごく運命的な場所に感じる!
谷
書店って、ちゃんと「中身」でつながれる場所だものね。
「さみしさ」っていう原動力があったから、おんなじことを思っている人がいるって信じたかった、というのは大きいかもしれないなあ。
池田
いま思ったんだけど、そういう考えだから、あやこの本って、すごくストレートに「売れる」のかもしれないね。
なんか、編集者をやっているうえで、「売れる」を目指すのってすこしカッコ悪い、みたいな風潮があると思うの。
「売れなくても、いい本を作ります」っていうような。
でも、あやこの本は、「誰かが困っていることがあって、それには、この著者さんはこういう答えが出せてそれで私はすごく助かったんだけど、これで助かる人、いませんか?」って素直に聞いてるんだよね。
だから、「あ、それ、私も困ってた! そういうふうに解決してくれたら、すごくうれしい!」っていうひとが、長く、多く、いるんだと思う。
谷
そうかなあ……?
そうだったら、うれしいけれど。
池田
なんか、そういう気持ちで、私も本をつくりたいなあ……。
なんだかすごく、やる気になりました。話を聞かせてくれてありがとう!
(おわり)
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