【全員に聞いてみた!】めっちゃ感動した、本の中の1行をおしえて!

Category: まなぶ onegyou_00

同じ1つの物事も、6人いれば6つの感想が生まれます。
しょうもないことからどうしても気になることまで、メンバー6つの視点でひとこと述べる。
ただそれだけの企画です。

今回のお題は「感動した1行」。

「この一行が読めただけで、この本を買った価値があった…!」
大げさではなく、そんなふうに思うことがあります。

そして編集者なら誰でも、
そんなふうに思ってもらえるような1行をうみだしたくて
仕事をしているんじゃないかと思います。

編集者、デザイナー、そしてフォトグラファーのメンバーに
どんな「1行」で感動したか、教えてもらっちゃいました!!

るりこ

私が感動した1行は、これ。

「ただ、これは、みんなまんが家はわかることなんだけど、数あるマンガの中から別の畑のクリエーターの人が、自分の作品を選んでくれたことの、この嬉しさ、っていうのがあるんです。」(よしながふみ)

これは、よしながふみさんというまんが家さんが、対談集のなかで、同じくまんが家の羽海野チカさんと対談した中でおっしゃったひと言。
ザックリと説明すると、よしながふみさんと羽海野チカさんは、初対面でものすごく気があって、16時間もしゃべり続けたそう。
そのなかで、ふたりっきりになったときに、羽海野チカさんが「ドラマになった時ってどうでした?」と真剣に聞いてきたそうです。
その真剣さを見て、「楽しかった、なんて終わらせてはいけない」と思って、「自分が持ってるだけのものを、全部お返ししなくちゃいけない」、と思ったそうです。

「実写化する」「アニメにする」というのって、ファンにとっては怖いことでもありますよね。
「メディアミックスされたら、絶対見ない」っていう人もいるし、正直言って「見ずに叩きやすい」ジャンルだと思います。
そして作家さんは、「売れたいと思って、魂を売ったな」というようなことを、自分の作品のファンだった人から、ばんばん言われちゃいますよね。
自分の作品を嫌いな人から言われるんじゃなくて、好きな人から言われるって、すごく……なんというか、みぞおちにくると思う。

そこでのまんが家さんの(というか、このおふたりの)本音……これにすごく納得がいったんです。
ほかのクリエーターさんが、自分の作品を選んで、そこに時間をかけてくれることの、嬉しさ。
そりゃあ、うれしいよなあ。そうだよなあ。
読者さんの感想を読むのが嬉しいのとおんなじように、
もしかしたらもっと深いところで(想像なのでわかりませんが)、「ここがよかった」「この人はこういう人なんですね」と言ってもらえることのよろこび。
そういう気持ちだったんだね…と、すごく沁み入った1行でした。

この本、三浦しをんさんや萩尾望都さん、堺雅人さんなんかと対談をしていて、どれもすごく、嘘がなくておもしろいです。
羽海野チカさんとも、ほかにもすごくいい話をたくさんしているので(仕事に対する心の話とか、まんが家はみんな同じ夢を見ている話とか)ぜひ読んでみてほしいです。

(『あのひととここだけのおしゃべり』(よしながふみ・白泉社文庫)

戸田

「こうして毎日が積み重なっていったら、…過ぎた日々より、今が重くなり大切になり、昔がかすれてゆくものだろうか。」
こいわすれ』(畠中恵・文藝春秋)

お江戸ファンタジー『しゃばけ』シリーズでおなじみ畠中恵さんの書かれた小説の一行です。
人生で一番つらかった時にこの一行を読んで、皆、こうして生きているのかもしれない、こう考えて生活するしかないのかもと、少し心が軽くなりました。

時にハッとしたり励まされたり。畠中さんの本には、ストンと心に入る言葉が散りばめられています。

「言ってくれない言葉を、待っている必要はないのだ。そんな言葉より、ずっときらきらとして、星のように好ましい思いが、この世にはあるのだから。」
まったなし

とか

しくじりは、何回してもいいんです。次に繋げていけばいい。大丈夫ですよ。
いっちばん

とか

だが、どう考えいかに動くのが正しいのか、皆、己で決めたものを中心に持っている。その大本の考えがそれぞれに違うから、どこでも、誰にでも通用する絶対的な「正しい」は、あるようで無いのだ。
うそうそ

とか。もう、一行紹介じゃなくなっちゃいました。畠中さんの本を読むたびに、心が動いた言葉をメモって読み返しています。大好きだ!

あみ

「そうです。最も大切なことは、こんなにもデリケートで、秘密裡に粛々と進行するのです」
秘密の花園ノート』(605円(税込み)、岩波ブックレット)。

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あの児童文学の名作、『秘密の花園』を作家の梨木香歩さんが解説した本です。
これは、主人公のメアリが、自分の館の隠された庭を発見し、
小鳥の巣づくりを見たときに入っている1行です。

読んでいる人にとっては、ただの情景描写で、読み飛ばす人もいるだろう箇所について
解説したときの文章なんですが、この一文ではじめて、
こんなに大事なことだったことが分かりました。
作家の評論というのは恐ろしいです。

梨木さんは「癒し」の名手というか、どの年齢の人も読めば癒されるという、
アドラーのような、フランクルのような名カウンセラーばりの本を書きます。
まさか、評論を書いても人を癒すなんて……。

米玉利

「ここにいるヤツらはさ、皆当たり前に夢とか目標とか持ってる。けど俺ら位の歳でそれを見つけている方が珍しいのによ。」田代勇介

これは矢沢あいさんの漫画「ご近所物語」でロン毛のイケメンボーイ、田代勇介が学園祭のヒトコマで言った台詞です。
漫画の内容は服飾デザイン課に通いながら、夢に向かってメラメラ燃え上がる女子高生が主人公のお話です。

16歳ぐらいに時に、自分が将来なにをやりたいのか全然わからなくて、なんとなく読み返した時にこの台詞を読んで
「ああ、別に今何かやりたいことを見つけなくてもいいのかもしれない」と思って、少し安心したのを覚えています。

そして17歳の夏ぐらいには、既にカメラを手にして写真を撮り始めていて、夢はフォトグラファー、と自分の中で決めていました。
でも親に言えなくて(厳格な父親から絶対に反対される、馬鹿にされると思っていたので)、、、。
その時にまたこの漫画を読み返した時
「ああ、いま夢とかやりたいことが見つかったって幸せなことなのかもしれない。やっぱりフォトグラファーになりたい!」と改めて思えた台詞です。

自分の心境の変化によって、同じ台詞でも捉え方や解釈のしかたってこんなにも変わるんだな、って初めて思った言葉でした。

にしてもこの学祭で主人公の実果子がファッションショーで自分が作ったドレスを着てバーン!と登場する瞬間は何度読んでも鳥肌もんなんです。
同世代の女性はきっと共感してくれるはず、、、!

私の感動した一行。

「太宰の小説は笑えるし、優しいし、何が好きなのどこが好きなの、と訊かれればそれらしく答えることもできるしこれまでだって答えてきたけど、実をいえば一度だって本当のことを言えたと思ったことがない。」

川上未映子さんの『世界クッキー』(定価476円・文春文庫)というエッセーの「あなたは、いつか私を見掛ける」にある一文です。
本を読んで、広告を見て、映画を観て、そしてお笑いを見て、感情の閾値が言葉を軽く超えていくこと、ありますよね。
無理に言葉にするなら「うわうわうわ」「なになになに」みたいな感じになっちゃうやつ。
(最近だと、『ラ・ラ・ランド』で「うわうわうわ」「はあああー」「ううううう」ってなりました)

人に、自分固有の感情をなるべく的確に伝えるためには、どうしたって言葉を中心にして、アウトプットすることになります。
そのときに、「思ってないこと」を含んでいる言葉を使ってしまうこともあったりして、あとで見直して「違ったなあ」と反省することも多々あり。
そのときのもどかしさを、まさに素直に書かれていて、しかもこの一文の存在そのものが、太宰に対しての敬意をあらわしていると思ったので、とりわけ輝いて見えました。

もう1行になってしまいますが、又吉直樹さんの『火花』にあったこんな文章にも打ちのめされました。

「つらいと感じることは、こんなにもつらいことだったのだ。つらいという言葉や概念を理解しても、つらいことの強度は減らない。」

「つらい」という感情がどんなものかを具体的に描写せず、それなのに読者の持っているそれぞれの「つらい」に反応してギューッとなってしまうこの表現を見たときも「あああああー」ってなりました。
結局、「あれがこうなってそうなるんだよ」とすぐ言っちゃう、指示語の多い人みたいな言い方しかできてなくてすみません。

あとるり子の本、じつは私も持ってるんですが(びっくりした!)、めちゃくちゃいい本です。
先輩から借りて、あやうく借りパクしそうになり(ほぼしてました)、自分で買ったくらい。
何度読んでも興奮する、超絶名著です。

宮崎

わたしが感動した一行はこちら。
作家たちが〆切について語った一冊『〆切本』(2300円・左右社)より、高見順氏の日記から。

四月十三日(水)
仕事場。
仕事できぬ。

四月十四日(金)
仕事場。
どうしても書けぬ。あやまりに文藝春秋へ行く。

四月二十日(木)
仕事場。
文春別冊の原稿、どうしてもと言われるが、筆が進まぬ。

とにかく筆が進まない言い訳が、つらつらと書かれています。
こんな日記を書いてるならさっさと進めたまえよと言いたくなるんですが、偉大な作家も〆切と格闘していたのか……と思うと、じーーーんとするわけです。
四月二十三日になると、高見氏は酔っ払いのアメリカ兵に鎌倉駅で生卵をぶっつけられるという散々な目に遭っています。
なんだか切なくて泣けてきますよね。。。

そして同じ本の中から、嵐山光三郎氏の「編集者の狂気について」より。

多くの編集者の友が死んだ。ほとんどロクな死に方ではない。ムリして死んでいる。他の業界なら死ななくてすむのに死んでいる。仕事にこだわりすぎている。

全国の編集者の皆さん! 健康第一ですよ。

みんなの「1行」、めっちゃ意外です!すごーい!この企画おもしろい!(笑)
世の中には、まだ出会っていない名著がたくさんあって、
しかも今この時でなければ感動できない1行が、そこにはたくさんある。

だから、出会えたらすごく大事にしたいし、他の人が出会った「1行」も教えてほしい……。
もしできたら、きらめく「1行」に出会ったら、ツイートなんぞしてみてくれるとすごく嬉しいです。
編集者って、自分の作った本のタイトルをおそるおそる検索してみて、
そこに一喜一憂している、心の小さいいきものだからです。

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この記事を書いた人

池田るり子
編集者
栃木県出身。甘いもの大好き編集者。趣味は走ることと歌うこと。これからは、小説をたくさんつくりたいなと思っています。