連載【ヒットメーカーに会ってみた!】
今日のインタビューは、売れに売れた『フランス人は10着しか服を持たない』(72万部)を編集された大和書房の鈴木萌さん。
『Advanced Style』(7.3万部)や『ニューヨークの女性の強く美しく生きる方法』(9.7万部)など、さまざまな女性エッセイ本を手がけられ、ヒットを連発していらっしゃいます。
女性向けジャンルのヒットメーカーって一体どんな人なの!?
そんな疑問に答えをみつけるべく、中野、谷、宮崎の三人で大和書房にお邪魔してきました!第1回 売れる「女性エッセイ」でいちばん大切なのって何ですか?(前編)
第2回 売れる「女性エッセイ」でいちばん大切なのって何ですか?(後編)
第3回 企画がひらめくときって、どんなとき?
第4回 著者って、どうやって探していますか?
第5回 タイトルってどうやってつけてるんですか?
第6回 心に刺さるオビネームは「共感」
中野
実は、私この本が不思議で(『ニューヨークの女性の強く美しく生きる方法』見せる)
中野
女性の自己啓発でこのテーマって珍しいと思ったんです。「私は私」「女も強く生きていこう」みたいな、強い女性になりたいテーマって自己啓発本の逆を行くなあって思ったんですよ。女性自己啓発は「ふんわり」「可愛く」が主流だと思っていたので。
鈴木
えっ、そうですか!?
中野
えっ、そんなことないですか!?
鈴木
驚きました。
中野
私、昔自己啓発で『プリンセスルール』って本を担当したんです。
鈴木
あ、あのキラキラの。
中野
5年前ですけど。そのときって、一大プリンセスブームで、やっぱり女性はふわふわで可愛くてっていうのがとても人気でした。同じく、ビジネス書で、女性がガンガン働いて強くなるっていうのって売れないっていう印象もあります。そういう本って『LEAN IN』くらいしか思いつかないです。
鈴木
確かにそうですね。
中野
私の友だちにも、ガンガン働いて強く生きていくのがかっこよくてやりたい!って思ってるのって、少数派というか。だから、強い女性に憧れる読者っていなさそうだなって思っていました。
鈴木
たしかに、女性向けのビジネス書って売れないですよね。でも、自己啓発ではそう思いませんでした。逆に「もう、ゆるふわはいいんじゃない?」ってみんな思ってるかもとは思いました。
中野
なるほど! たしかに、ゆるふわはツッコミどころありますもんね! 売れているジャンルの逆張りですね。でも、それで新しい市場を開拓した、すごい本ですよね。やっぱり勇気がありますね。
宮崎
あと、これってパッケージは強いんだけれど、中身はそんなに強くないですよね。
中野
ちょっとそれ思ってました。
鈴木
「強い女性」と「美しい女性」のバランスは、エリカさんと相談しながら決めていきました。やっぱり強いだけというのは理想にはならないっていうか……。
中野
エリカさんの理想の女性は、こういう見出しのバランスなんですね。それはやっぱり「新しい女性」ですね。
中野
どういう経緯で企画にしようと思ったんですか?
鈴木
よくお仕事をしているライターさんから、芯の通った素敵な人がいるって紹介されたんです。それで、ちょっとただ者じゃない雰囲気だったので、この方に書いてもらいたいなと思いました。
中野
その「企画にしたい」って思うときってどんな感じですか?
鈴木
やっぱりお会いして、雰囲気です。
中野
著者の雰囲気?
鈴木
なんですかね…。
中野
どんな感じでした? ただ者ではないとは。
鈴木
もう本当に、全然まわりのこと気にしてなかったんですよね。美しくて、背筋がぴっとしていて、完全にモデルさんみたいな。でも話し方は穏やかで、何があっても本当に「私は私」みたいな、そんな感じの人でした。
中野
そうなんですね! 外見大事なんですね。内容についてはどんな感じで判断しますか?
鈴木
項目案をいくつかいただくことにしています。30個くらいです。あと、初めての本でしたので、サンプル原稿を書いていただきました。それが、もっと読みたいって思う内容で。
中野
ちなみに、会ってから項目案を出してもらったんですよね?
鈴木
実は、項目の方が先だったんです。最初にいただいてて、でもちょっとわからなくて…。だから、お会いしてみたいなと思って。
中野
会って、この人だったらいけるって判断されるんですね。人なんですね、じゃあ。実は私も第一印象でいろいろ決めちゃって、たとえばやっぱりカリスマ性ある方だと、すぐ好きになっちゃって、「出そう!」と思うんですけど、たまに失敗するんですよ。作っているうちに「ああ、面白くないかも……どうしよう…」みたいな。それで途中で泣く泣く中止したり。
鈴木
そういう場合もありますよね。
中野
それは人を見る目とコンテンツを見る目を養うしかないんですかね。企画にするぞっていうときの基準ってありますか?
鈴木
理想的なのは、著者の方が「本を出す」のが目的じゃなくて「売る」っていう意識を持っていることですよね。それって、「これが言いたい」という自分の気持ちだけじゃなくて、読者を見ているってことだと思うので。
宮崎
やっぱりお互い同じ目標に向かって走りたいですからね。
中野
そして、長丁場だから自分がやりたいっていうのはとても大切ですよね。本つくるのは長丁場だから、著者だけじゃなくてデザイナーさんとかライターさんとか、本当に気が合った人とやりたい……。
宮崎
なんでエリカさんでこのネタでいこうと思ったんですか? 読むと、たとえば企業家としてビジネス書で出すこともできるし、違う切り口もありましたよね。
鈴木
既にエリカさんが企画書を書いてくださっていて、もともと、テーマが「強く美しく生きる」だったんですね。それがいいと思ったので、テーマはそのままで、でも自己啓発的な内容だけじゃなくて、ニューヨークで出会った人とのエピソードとか、街の情景みたいなものもたくさん入れてくださいってお願いしました。
中野
おおっ! あれ、『フランス人10着』と似てる…!?
谷
そんな編集スタイルがあったとは。
鈴木
そこからの学びをエリカさんの言葉で書いてもらうことにしたんです。自己啓発と、あと、純粋に読み物としても面白いかなと思って。
宮崎
ここでも自己啓発と読み物としての面白さの両方が出てきますね。
まとめ
〇第一印象を大切にしちゃっていい
〇売れるという意識を持っている著者さんを探す
第4回 著者って、どうやって探していますか? に続きます!
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