ものすごい本に出会ってしまいました。
『休日が楽しみになる昼ごはん』。
読者として読みながら「わー、おいしそう、これつくってみよう♪」なんて思っていたのはつかの間。編集者として「こ、こ、この本、どうやってつくるの…?」という疑問がむくむくとわいてきました。
まず、1枚目の写真を見てほしいんです。
この本をつくる手順がひと目でわかる編集者の人がいたら、連絡ください。
高級レストランとかでおごります。
ええ、強気です。だって、たぶんいないと思うもん。どうやってつくるのか、聞きたい…!と思ったら、
なんとこの本をつくったのは、校了メンバーの谷綾子さんではないですか。
こんな偶然、あるんですね。(舞の海風に)
というわけで…こんな本、どうやってつくるの!?
どんな順番で?
どんな発想法で?
どういうスタッフさんで?を、ぜんぶ聞いてきました!!!!
池田
前回は、ラフを描くところまでお聞きしました。
次はどうするの?
谷
次は、デザイナーさんと打ち合せします。
6)ラフをもってデザイナーさんと打ち合わせ
谷
文章とラフができたら、デザイナーさんに見せて打ち合わせをします。1見開きずつ説明しながら、どんなレシピなのかをお伝えして、ページごとのコンセプトを共有します。
あと、ラフも見ていただいて「これ、こういう趣旨なんですけど、もっといい見せ方ってありますか?」と相談します。
あとは撮影の時に、どんな背景でどんな器で、どんな色の板やクロスをつかうかなどを、ざっくりと決めるためでもあります。
池田
でも、食器のスタイリストさんもいるんでしょ?
谷
でも、1冊の本として見たときに、単調にならないようにしたくて。おなじ麺が続くときに、器でどう変化をつけるのかとかも、できるかぎり話し合います。
池田
それを決めてからスタイリストさんに依頼したら、たしかに明確になりそう!
7)スタイリスト、カメラマン、著者の先生と一緒に打ち合わせ
池田
さすがにそろそろ、撮影になる?
谷
ここで、だいたい撮影の半月から1か月前くらいかな。
池田
まじで!? さすがにもう撮影するかと思ってたけど!
準備が半端ない……
谷
次は、スタイリスト、カメラマン、著者の先生とみんなで集まって、ページごとに「どんな写真を撮りたいのか」を共有します。
池田
カメラマンさんもいらっしゃるんだね?
谷
そうそう。この本にはカメラマンさんが3人いて、角版1名、切り抜き2名に分かれていて、同じ部屋の3か所で同時進行しているの。
(※角版…写真を四角く使う方法。背景がそのまま映り込むので、雰囲気を見せたいときに。)
(※切り抜き…写真を切り抜いて使う方法。その物だけトリミングして、背景は消えるので、記号的に見せたいときなどに。)
ふつうこんな体制ありえないけど、神のようなカメラマンさんの一族がいてね。
だから、どんな写真がどれだけあって、それぞれどう撮りたいかを伝えます。
池田
なるほど! 3人もいるんだ……全部の写真を確認するだけで目がまわりそうだなあ。
撮影のこうばん表というか、段取りはどう決めているの?
谷
えっとね、ラフを元に、日付と順番を先生の会社のスタッフさんが組んでくださっています。
材料に無駄が出ず、カメラマンさんも撮りやすいよう、いつも完璧に、そしてスムーズに進行してくださいます。神です。
池田
神がまたいた!!
7)全ページ、仮組があがる
谷
そして、撮影当日に、デザイナーさんからこの「仮組み」があがってきます。これを見ながら撮影をすすめるの。
池田
おおおお! すごい! これがあれば、どこにどのくらい文字が入るとか、どういうふうに見せたいとかがわかるから、スタッフ全員にイメージが共有できるね!
谷
そうそう。写真やイラストは全部、仮のものなの。でもこれがあるのとないのでは大違いでさ。
池田
これを作ってくださるっていうのもすごいね……?
谷
うん、頼んでないのにこれを持ってきてくれたときの感動といったらないよね。
絶対めんどくさいのに製本までしてくれて。神だよね。
池田
神、5人目!!!!
8)撮影
池田
そして、やっと撮影になるんだね!?
撮影中に気をつけていることって何かありますか?
谷
うん。撮影中はね、ひたすら食べているよ。とにかく全種類食べる。太ってもいいから食べる。
池田
食べるときって、何をチェックしているの?
谷
うーん。小田先生のレシピってぜんぶすごくおいしいから、ただただ至福だよ。
池田
え、それだけ……?
谷
あ、これじゃただの食いしん坊になっちゃう。あぶないあぶない。
えっと「このおいしさをどうやって伝えようかな?」ってことを考えているよ。観察するように食べてる感じかな。
「これ、食べてみたい」も「作ってみたい」の原動力になるからね。
あとは味が、最大公約数的においしいかどうか。「もしかして酸味が苦手な人だと、ちょっとすっぱいかもしれない」とか。
「子どもが食べたらからいかな」とか。それを先生に相談すると、ちゃんと味がおいしく成立するように、快く調整してくださるのよ。
池田
なるほど~! そこはきちんと話をするんだね。
撮影は何日くらいやるの?
谷
撮影は4日間だったよ。10時から20時くらいかな。
池田
えええっ!この数、4日間で!すごいね!!!!
私がやったら、1週間はかかりそう……。
谷
そうなんだよ。でも私は何もしてなくて、ただただ、スタッフさんのオペレーションが神なの。
池田
神だね……。
もはや神の人数が数えられないよ。
9)写真があがってくる
谷
撮影が終わったら、カメラマンさんから写真が上がってきます。
池田
ここまで決まってたら、ほぼ決めうちで撮れそうだよね?何枚も撮っておくってなさそう。
谷
うんうん、ほぼ決め。
池田
たまご割ったのと割ってないのくらい?
谷
まさにそうだよ!(笑)
だから、デザイナーさんには基本的に全部送って、よきほうを使ってもらう感じにしています。
池田
なるほど~!
撮影が終わってからやるのは、デザイナーさんに写真を送ることだけ?
谷
ううん。テキストの差し替えも送ります。
10)デザイナーさんにテキスト差し替えを送る
谷
仮組みしてもらった文字数に合わせて、書いていなかった部分のテキストを書いたり、すでに書いてあったところを書き直したりして、すべてのページの文章を送ります。
池田
それだけですごい時間かかりそう……何日くらいかかるの?
谷
撮影1日分あたり、3日くらいかな……。そのあと、またどうせ直すんだけどね。
11)ついに初校が!
池田
そしたら、初校ができるのかな?
谷
そう!ここには、本番の写真と本番の文章と、イラストのアタリがはいっているの。この初校と、最初に描いたラフをわたして、イラストラフを描いてもらう依頼をします。
池田
おお!ここでイラストの依頼があるんだね。
すでに写真ができているから、その上に描くようなイメージなんだね。
谷
うん、じっさいにはもちろんその上には描かないで、データで来るけどね。
池田
あ、そうだよね(笑)
それで、初校の文章チェックも並行してやるの?
谷
そうそう。赤字入りまくりだよ……。自分の未熟さゆえ、ほとんど差し替えになります。印刷所の方、ごめんなさい。
池田
入りまくるよね……。ごめんなさい……。
12)イラスト決定
谷
イラストラフが来たら、少しだけやりとりをして、イラストが完成します。
池田
どんなことをやりとりするの?
谷
すでに打ち合せでがっつり方向性は話してるから、かなり細かいことだよ。たとえば表情は笑顔じゃなくしたいとか、ここの言葉はこう変えたいとか……。キャラクターの造形とかは、イラストレーターさんが神だから、あんまり修正お願いすることはないかなあ。
池田
そしたらついに、イラスト完成だね!!!
谷
そうそう、それで、イラストのラフができたら、デザイナーさんに配置してもらいます。そこで、だいたいのサイズがわかるから、それをイラストレーターさんに渡して、本描きに入っていただくよ。
池田
なるほどー、ここでイラストが入るのかあ。謎が解けてきたよ。
谷
そうなんだよ!
撮影が終わるまで描き始めてもらえないから、それまでの期間に打ち合わせして、キャラクターとかを考えておいてもらって、
初校が出たら一気に描き進めていただいてるよ。
イラストの本描きが上がったら、文章の赤字を戻して、本番のイラストに差し替えてもらいます。あとはたぶん、普通の本の進行と一緒かな?
見出しや文章をなおしたり、たとえばイラストの位置やサイズを変えたりして、調整していきます。
この部分はDTPさんにお願いするんだけど、校正に出したあと、最後にまたデザイナーさんにもどして、最後の最後にデータを調整してもらって、、、入稿します!!!!
池田
ついに!ついに入稿だよ……すごいね!!やったね!!!!!
ものすごい苦労だよねえ……。
でも、こうやってつくるってわかって、なんだか謎が解けたよ。
もしかしたら、私にも作れるかもしれないって、一瞬だけ思ったけど、たぶんできないけど、でも、作ってみたいよ……。
谷
作れるよ! 道のりは長いけど、とても楽しい工程だよ。
でも、シリーズ1冊目のときは、もっと行ったり来たりしながら作っていたんだ……。
最初からぜんぶ見えてたわけじゃなくて、ふんわり「こんな本にしたい」っていう、イメージ以前の理想があって、一つひとつそれを具現化する感じでできた本だよ。
もっと効率のいいやり方があるなら、誰か教えてください!
池田
あはは!とっても楽しそうなことは伝わってきた!
谷さん、本当にありがとうございました!
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
あのう、読者の方の中に、まだこの『休日は楽しみになる昼ごはん』をもっていない人、いませんか?
ここまで教えてもらったんだし……ほら、Amazonポチッと! 書店にgo!!
この記事を書いた人
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