『終電ごはん』という本をご存じでしょうか。
まるで文芸書のような、黒い装丁に柔らかい文字。
簡単でおいしそう。そんなレシピが載ったこの本を執筆されたのが、梅津有希子さんです。最初はこの『終電ごはん』についてのお話を伺う予定だったのですが、流れは思わぬ方向に。
谷
いやはや、本当に多彩な梅津さんに驚くばかりですが、犬、猫、料理のほかに、なんとSNSの発信についての本も出されてるんですよね。
梅津
出してます。『ミセス・シンデレラ 夢を叶える発信力の磨き方』って本です。3年ぐらい前に出しました。
谷
これはどんな本なのですか?
梅津
一般の人で本を出したり、世に出たい人は、SNSやブログで、こういうところに気をつけて発信したら、メディアの人の目に留まりますよっていうのを解説した本なんです。
谷
それは、知りたい人多そう。
梅津
今でこそ、編集者って、twitterとかのバズとかみてますけど、当時はまだそこまでいってない頃でした。だから誰にでも本を出せるチャンスはいっぱいあるし、プロとアマの境目がなくなってきて。ライターもですけど、料理家やスタイリストもそうですよね。ブロガーやインスタグラマーの方が、料理や片付け、ファッションの本を出しちゃったりするので。誰にでもそういうチャンスはありますよっていうことを書いた本なんです。
谷
まさに、著者になるつもりのなかった梅津さんが、著者になってしまったように。
梅津
はい。まさに。
谷
もうひとつ、取材前からずっと気になっている『ブラバン甲子園大研究』という本についてお伺いしたいんですが……。
梅津
気になっちゃいますよね(笑)
谷
気になっちゃいます(笑)プロフィール見て「???」ってなってました……。
梅津
ですよね(笑)これも完全にtwitter発です。
谷
これも……!
梅津
よく春の選抜とか、夏の甲子園とかの高校野球をテレビで中継してるじゃないですか。もともと野球に興味がなかったから全然見てなかったんですけど、何となくテレビをつけてると、北海道(※梅津さんの地元)はどこの高校が出てるかなって見ちゃって。当然、そのときに、応援の音が聴こえてきますよね。
谷
はい、夏の風物詩って感じですよね。
梅津
だいたい野球の応援って、みんな同じ曲ばっかりだと思ったんです。「サウスポー」とか「狙いうち」とか。そのときにたまたま、私が高校のときに吹奏楽コンクールの全国大会で一緒になったことのある、常総学院が試合に出てたんです。
谷
常総学院(スマホで調べる)。茨城県の代表なんですね。
梅津
はい、常総はどんな応援なんだろうって思って音量を上げてみたら、すっごいうまかったんです。それで調べたら、吹奏楽で全国大会出てくる学校と、野球で甲子園に出てくる学校ってすごいかぶってることがわかったんです。
谷
そうなんですか!?
梅津
大阪桐蔭とか、愛工大名電、天理とか。
梅津
それで、いつもテレビを見ながら「今のはアフリカンシンフォニーって曲」とかtwitterで勝手に解説するようになって。そしたら「梅津さんのtwitterみながら中継みてると、わからなかった曲のことがわかっておもしろい」っていう反応が、ちょこちょことくるようになってきたんです。その中に、文藝春秋の人がいたんです。「梅津さんのアレおもしろいですね」って。
谷
これは『終電ごはん』のときと同じ流れ!
梅津
そうなんですけど。でもその人、『CREA』の編集部で。
谷
『CREA』と、高校野球……(複雑な顔)。
梅津
ってなりますよね(笑)。だから、何もできないけど、なんとかどこかで世に出したいって言ってくれて。そしたら『CREA』で「すぐできる、夏休みっぽいこと」という特集をやることになって、そこで無理矢理「甲子園のブラバンを研究する」っていうページをねじ込んでくれたんです。
谷
ねじ込んでくれた(笑)
梅津
そしたら「何だ、このマニアックなページは」ってなって。他のページは「スイカを食べる🌟」とか「かき氷店めぐりをする🌟」とかなのに、急に「甲子園のブラバン」って出てきて「何これ?」って。
一同 (爆笑)
梅津
そのあと同じ文藝春秋の「『Number』でこんな企画をやりたいんです」って企画書を出しました。それで初めて『Number』編集部の人に会って。
谷
どんな反応だったんですか?
梅津
なんかすごいマニアックな企画がきたぞってなって。「ちょっと本誌だと難しいから、WEBのほうだったら、やってみますか?」って、書かせてくれたんですよ。「野球の強豪は、吹奏楽の名門も多い⁉︎ 完全ブラバン目線で見る選抜甲子園。」や、「なぜ高校野球のブラバンは懐メロが多い?」という記事を書きました。
一同 おもしろそう!
梅津
そしたらニッチすぎてウケたんです。すごい拡散されて、Yahoo!トピックス入りもして。
谷
すごい。話題になったんですね。
梅津
そう、その反響のおかげで、NumberWebに春の選抜、夏の甲子園のときだけ出てくるライターになりました。春夏限定ですね。
谷
一人TUBE状態ですね。
梅津
他のシーズンは静かにしてましたからね(笑)。それで、WEBで書かせてもらっているうちに、ついに『Number』本誌から「高校野球特集やるから、応援的な楽しみ方のコラムを書いてくれないか」って言っていただいて。
谷
おおお!
梅津
感無量でした。「あの『Number』になぜ私が!」みたいな。
谷
満を持して、ですね。じゃあ、そこからスムーズに本になったんですか?
梅津
いえ、書籍化に至るまではそんなに簡単じゃなかったです。
第7回に続く…
この記事を書いた人
RANKING